
位牌を処分する際には、「魂抜き(たましいぬき)」という儀式を行う必要があります。
ただ、「魂抜き」という言葉は日常ではあまり聞き慣れず、「具体的に何をするの?」「どこにお願いすればいいの?」と不安に感じる方も多いでしょう。
この記事では、魂抜きの意味や儀式の流れ、依頼先や費用の目安について、分かりやすくご説明します。
大切な位牌を安心して手放すための参考にしていただければ幸いです。
位牌の魂抜きとは
位牌を処分するとなると、「どう処分すればいいのか」「本当に処分しても問題ないのか」と不安に思う方は多いものです。
位牌を手放す際には「魂抜き」という儀式が必要になりますが、そもそもなぜ必要なのか、魂抜きをしないとどうなるのか、よく分からないという方もいらっしゃるでしょう。
位牌を安心して処分できるよう魂抜きの意味や必要性、行わない場合のリスクについて分かりやすくご説明します。
位牌の魂抜きとは
魂抜きとは、位牌に宿る先祖の魂を抜く儀式のことを指します。
地域や宗派によっては「閉眼供養」や「性根抜き」と呼ばれることもあり、場合によっては魂抜きの儀式自体が不要なケースもあります。
そのため、まずは菩提寺などの信頼できるお寺に確認することが大切です。
例えば浄土真宗では、魂を入れたり抜いたりするという考え方がないため、魂抜きの儀式は行いません。
ただし、代わりに「遷仏法要」と呼ばれる読経の儀式が執り行われます。
位牌の魂抜きは必要?
位牌を処分したり引っ越したりする際には、必ず「魂抜き」の儀式を行います。
魂抜きをすると、それまで先祖の霊が宿っていた位牌が、「ただの木の板」へと変わります。
この変化によって、位牌は供養の対象から外れ、問題なく処分できるようになるのです。
位牌を仏壇に初めて設置するときには、「魂入れ」の儀式を行い、先祖の魂を位牌に入れます。
そのため、位牌を処分する際には、まず位牌に入っている先祖の魂を抜く「魂抜き」が必要となります。
なお、葬儀で使われる白木の簡易位牌も、四十九日法要で本位牌に替える際に魂抜きをしてから処分します。
位牌の魂抜きをしないとどうなる?
位牌には先祖の魂が宿っていると考えられているため、魂抜きをせずに処分すると、魂が入ったままの状態で処分することになります。
とはいえ、魂抜きはあくまで心の区切りをつけるためのものであり、これを行わなかったからといって罰せられることはありません。
位牌の魂抜きは自分でできる?
魂抜きは仏教における儀式で、僧侶による読経が必要なため、自分で行うことができません。
葬儀を執り行った菩提寺など、寺院に依頼して魂抜きをしてもらいましょう。
位牌の魂抜きが必要なタイミング

位牌の魂抜きが必要になるのは、どのようなときなのでしょうか。
ここでは、魂抜きを行う時期やタイミングについてご説明します。
位牌を新しく作り替えるとき
位牌を作り替える際は、まず処分する古い位牌の魂抜きを行い、新しく準備した位牌には魂入れの儀式が必要です。
位牌の作り替えには、古くなったため買い替える場合のほかに、夫婦連名の位牌に作り替えるケースもあります。
また、葬儀の際に白木の位牌が準備されますが、これは本位牌を購入するまでの仮の位牌です。
本位牌は四十九日法要までに準備をするのが一般的で、四十九日法要のときに仮位牌の魂抜きと本位牌の魂入れを行います。
弔い上げ
弔い上げとは、最後に行う法要のことです。
葬儀の後に四十九日法要があり、その後は一周忌や三周忌のように、決まった年数で年忌法要を行います。
「以降は年忌法要を行わず、ここで終了にする」という最後の法要が弔い上げで、三十三回忌や五十回忌にする方が多いです。
弔い上げで位牌を処分するため、魂抜きを行います。
引っ越し
引っ越し先に仏壇を置くスペースがないなど、位牌を処分しなければならない場合は、魂抜きを行ってから処分します。
また、引っ越し先でも仏壇を設置して位牌を祀るという場合も、魂抜きが必要です。
引っ越しに限らず、祀る場所の移動などで家から外へ位牌を出すときには、魂抜きをして、設置した先で魂入れをすることが望ましいです。
空き家になった実家などの遺品整理
両親が他界した実家や、長年にわたって空き家となっている家の遺品整理をする際に、位牌があれば魂抜きが必要です。
誰の位牌なのか分からない場合でも、位牌には故人の魂が込められているため、処分の前に魂抜きを行いましょう。
位牌の魂抜きの依頼先

魂抜きが必要だと分かると、次の疑問は、どこに魂抜きをお願いするのか、ということではないでしょうか。
魂抜きの依頼先について解説します。
菩提寺
位牌の魂抜きは、葬儀や年忌法要でお世話になった菩提寺に依頼するのが一般的です。
先祖代々のお墓がある場合も、その菩提寺にお願いするとよいでしょう。
もし菩提寺がない場合は、同じ宗派のお寺を探して相談してみてください。
仏壇・仏具店
寺院への相談が難しい場合には、仏壇・仏具店へ相談するのも一つの方法です。
仏壇・仏具店では、寺院と提携して位牌の魂抜きに対応しているところや、提携している寺院を紹介してもらえることがあります。
ただし、すべての仏壇・仏具店で対応してもらえるわけではないので、注意が必要です。
遺品整理業者
遺品整理などで位牌以外にも処分したい品物がある場合は、遺品整理業者に相談するのも一つの方法です。
遺品整理業者には大きく分けて2種類あります。
1つ目は、回収した位牌の魂抜きを、寺院に依頼してくれる業者です。
2つ目は、位牌の処分のみを請け負う業者です。
後者の処分のみ可能な業者に依頼する場合は、事前にご自身で寺院に魂抜きをお願いする必要がありますので、ご注意ください。
魂抜きなど位牌の処分にかかる費用

魂抜きには、お布施などの費用がかかります。
具体的にどのような費用が必要なのか、気になる金額の相場についてもご紹介します。
お布施の相場
魂抜きを寺院にお願いする際のお布施は、1万円から5万円が相場といわれています。
これは、魂抜きのみを行う場合の金額で、四十九日法要や年忌法要と同時に行う場合には、法要のお布施も必要です。
お布施の金額は、トラブルを防ぐためにも、事前に寺院へ確認することがおすすめです。
まれに後で高額なお布施を請求されるといったトラブルが起こることもありますが、事前に金額を確認することで防げます。
金額の聞き方
「いくら包めばいいのか」を直接尋ねても、多くの場合「お気持ちで結構です」と返されてしまい、結局具体的な金額が分からないことがあります。
こうした場合は、「ほかの方はお布施をどのくらいされていますか?」と尋ねると、答えてもらいやすくなります。
もちろん、このように聞いても「皆さんそれぞれですので、お気持ちで結構です」と言われることもあります。そのような場合には、相場を参考にして金額を決めてください。
お車代
寺院で魂抜きを行う場合には不要ですが、僧侶に自宅まで出向いてもらう場合には、お車代を包みます。
お車代の相場は、距離にもよりますが5千円が一般的です。
自宅での魂抜きでも、僧侶を車で送迎する場合、お車代は必要ありません。
業者に依頼する場合の費用
遺品整理業者に依頼する費用は、5千円から1万円程度が相場です。
しかし、業者に依頼する場合はほかにも家具や生活用品など、多くの処分品があるため、複数の業者に見積もりを出してもらい、比較検討することが大切です。
業者によっては、不用品をただ処分するだけでなく、骨董品や切手、ブランド品、生活用品については買取ができる業者もあります。
位牌の魂抜きを行う流れ

位牌の魂抜きをすることが決まると、依頼や準備など、どのような流れで進めていけばいいのかを解説します。
日程を決めて依頼
日程を決めて寺院に依頼する際、家族だけで日程を確定してから連絡すると、僧侶の都合と合わない場合があります。
そのため、あらかじめ家族でいくつか候補日を挙げておき、僧侶と相談しながら調整するとスムーズに進みます。
また、疑問点や確認したいことがあれば、依頼時に遠慮せず質問や調整を行うことで、安心して準備を進められるでしょう。
仏具・お供え物の準備
魂抜きの際には、仏具やお供え物を準備します。
必要なものは寺院や宗派によって異なるため、事前に寺院へ確認することが大切です。
木魚が必要な場合もありますが、多くのご家庭では木魚を所持していないことが多いです。
寺院から持参してもらえる場合もありますが、購入を勧められることもあるため、依頼時に確認しておくと安心です。
一般的には、仏具として香炉・線香・ロウソク立て・ロウソクなどが必要です。
お供え物としては、仏壇に供える1対2束の生花や、故人の好物だったお菓子などを用意します。
お布施の準備
お布施やお車代の準備が必要で、お金は金封または白封筒に入れて渡します。
紙幣は、新札を準備しておくことが望ましいです。
弔事は古札がマナーといわれますが、これは葬儀の場合で、法要や魂抜きなど事前の準備が可能なものは、新札がよいとされています。
金封または白封筒の表面は、上部に「お布施」を、下部に氏名を書きます。
金封の中袋、白封筒の裏面には、住所などの連絡先と氏名を書きましょう。
まとめ
位牌の魂抜きについて、何のために行われる儀式なのか、どこに依頼すればいいのか、費用の相場について解説しました。
お通夜や葬儀は参列する機会が多く、一般的なマナーは広く知られていますが、魂抜きは一生の間に経験しない人も珍しくありません。
そのため、いざ魂抜きが必要となった際には、依頼先や準備すべきことが分からず戸惑ってしまうこともあるでしょう。
魂抜きが必要になった際には、ぜひこの記事を参考にし、落ち着いて準備を進めていってください。
