改葬(かいそう)とは、お墓に納められた遺骨を取り出し、現在お墓がある市区町村長の許可(改葬許可証)を得て、別のお墓・納骨堂・樹木葬などへ移す「お墓の引越し」のことです。遺骨を勝手に移動することは法律で認められておらず、必ず所定の手続きが必要になります。この記事では、改葬と墓じまいの違い・改葬許可証の取り方(必要書類3点)・手続きの流れ・費用の目安・閉眼供養・浄土真宗の考え方までを、順を追って解説します。
あわせて、多くの解説で抜け落ちがちな「改葬・墓じまいをしても、位牌はどうするのか」という点も正面から取り上げます。仏壇・仏具の修復を手がける立場から、物を売るためではなく、供養する側の安心を第一に中立にまとめました。
- 改葬とは何か(墓地埋葬法上の定義と、増加している背景)
- 改葬と墓じまいの違い(比較表・通常はセットで行う)
- 改葬許可証がなぜ必要か(法的根拠・罰則・遺骨1体につき1通)
- 改葬許可証の取り方=必要書類3点セットと入手先
- 改葬手続きの流れ(6ステップ)と費用の目安・内訳
- 閉眼供養(魂抜き)・開眼供養(魂入れ)と浄土真宗の受けとめ方
- 改葬・墓じまい後、位牌はどうする?(自宅で祀り続けるのが基本)
改葬とは?「お墓の引越し」をわかりやすく解説
改葬とは、今あるお墓から遺骨を取り出し、別のお墓・納骨堂・樹木葬・永代供養墓などへ移すことです。いわば「お墓の引越し」で、遠方のお墓を自宅の近くに移したい、承継者がいないので永代供養に切り替えたい、といった理由で行われます。
法律(墓地埋葬法=正式名称「墓地、埋葬等に関する法律」)では、改葬を「一度埋葬・埋蔵した遺体や焼骨(遺骨)を、別の墳墓や納骨堂へ移すこと」と定めています(同法第2条)。遺骨は自由に持ち出せるものではなく、後述する改葬許可証を得たうえで移すことが定められています。
厚生労働省の統計(衛生行政報告例)によれば、改葬の件数は近年増加傾向にあり、令和5年度(2023年度)には全国で約16.7万件(166,886件)にのぼります。少子高齢化・核家族化・お墓の遠方化・後継者不在といった事情を背景に、改葬や墓じまいはもはや特別なことではなくなっています。
改葬と墓じまいの違い
「改葬」と「墓じまい」はよく混同されますが、指している対象が異なります。改葬=遺骨を移すこと、墓じまい=お墓(墓石・区画)を撤去して更地にし、墓地を管理者に返還することです。
| 改葬 | 墓じまい | |
|---|---|---|
| 意味 | 遺骨を今の墓から別の墓・納骨堂などへ移す | 墓石を撤去し更地にして墓地を管理者へ返す |
| 対象 | 遺骨(の移動) | お墓・区画(の撤去・返還) |
| 必要な手続き | 改葬許可証の取得(法的に必須) | 墓地の返還手続き・墓石撤去工事 |
実際には、墓じまいをして取り出した遺骨を新しい供養先へ移す──その「遺骨の移動」の部分が改葬にあたります。多くの場合、墓じまいと改葬は一連の流れとしてセットで行われます。墓じまい全体の流れや費用は「墓じまいとは」でくわしく解説しています。
なお、取り出した遺骨を自宅で供養(手元供養)する・散骨する場合は、移す先が「墓地・納骨堂」ではないため、厳密には改葬に当たらないケースもあります。ただし墓地から遺骨を取り出す時点で書類を求められることが多いため、いずれの場合も現在のお墓の管理者と自治体への確認が欠かせません。
改葬許可証とは?なぜ必要なのか
改葬許可証とは、遺骨を別の場所へ移すことを、現在お墓がある市区町村が正式に許可したことを証明する書類です。墓地埋葬法により、改葬を行う人は市町村長の許可を受けなければならないと定められています(同法第5条)。
許可を受けずに遺骨を移動すると法律違反となり、二万円以下の罰金または拘留・科料の対象になります(同法第21条。無許可改葬に懲役刑はありません)。「自分の家のお墓だから」と勝手に遺骨を持ち出すことはできない、という点に注意してください。
- 遺骨1体(1柱)につき、改葬許可証は1通必要です。複数のご遺骨を移す場合は、その人数分の申請が必要になります。
- 申請先は「現在のお墓がある市区町村」です。移転先の自治体ではありません。
- 改葬許可証は、移転先での納骨時に提出します。
改葬許可証の取り方=必要書類3点セット
改葬許可証を受け取るには、次の3つの書類を揃えて、現在のお墓がある市区町村役場に提出します。それぞれ発行元・役割・入手先が異なります。
① 埋葬(埋蔵)証明書
現在のお墓の管理者(寺院・霊園・墓地の管理事務所など)が発行する書類で、「その遺骨が確かにこのお墓に納められている」ことを証明します。改葬許可申請書の所定欄に管理者から署名・押印をもらう形式の自治体も多くあります。発行手数料は数百円〜数千円程度が目安です。
② 受入証明書
新しい納骨先(移転先のお墓・納骨堂・永代供養墓など)が発行する書類で、「この遺骨を受け入れます」ことを証明します。永代使用許可証や墓地使用許可証が代わりになる場合もあります。まず移転先を決めて契約し、この証明書を取得しておくのが最初のステップです。
③ 改葬許可申請書
現在のお墓がある市区町村役場で入手します(多くの自治体はホームページからダウンロードも可能)。故人の氏名・本籍・死亡年月日・埋葬年月日・改葬の理由・移転先などを記入します。上記①②を添えて提出すると、審査のうえ改葬許可証が交付されます。記入内容に不明点があるときは、窓口で確認しながら書き進めると安心です。
改葬手続きの流れ【6ステップ】
改葬は、次の順序で進めるとスムーズです。書類を先に揃えてから、閉眼供養・遺骨の取り出しへと進みます。
- 新しい納骨先・供養方法を決める……移転先のお墓・納骨堂・永代供養墓などを決めて契約し、受入証明書を受け取ります。
- 現在のお墓の管理者に改葬の意向を伝える……寺院墓地の場合は菩提寺へ早めに相談し、埋葬(埋蔵)証明の手配を依頼します。
- 市区町村役場で改葬許可を申請する……現墓地のある役場で改葬許可申請書を入手・記入し、①②を添えて提出します。
- 改葬許可証の交付を受ける……審査後、遺骨1体につき1通の改葬許可証が交付されます。
- 閉眼供養(魂抜き)を行い、遺骨を取り出す……墓石を撤去する前に僧侶に読経を依頼し、その後に出骨します。石材店に依頼するのが一般的です。
- 新しい納骨先へ納骨する……改葬許可証を提出し、開眼供養(魂入れ)・納骨法要を営んで納めます。墓じまいを伴う場合は、旧墓地を更地にして管理者へ返還します。
自治体・寺院・石材店との調整が必要なため、全体では数週間〜数か月かかることも珍しくありません。時間に余裕をもって進めましょう。
改葬にかかる費用の目安と内訳
改葬(墓じまいを伴う場合)の費用は、大きく「旧墓地側の費用」「行政手続き」「新しい納骨先の費用」に分かれます。おおよその目安は次のとおりです。
| 項目 | 費用の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 墓石の撤去・整地 | 1㎡あたり10万〜15万円 | 面積・立地・重機の入りやすさで変動 |
| 遺骨の取り出し(出骨) | 1柱あたり3万〜5万円程度 | 石材店に依頼する場合 |
| 閉眼供養(魂抜き)のお布施 | 1万〜3万円程度 | 地域・寺院で差。開眼供養も同程度 |
| 離檀料(寺院墓地の場合) | 定めなし(数万〜20万円の例も) | トラブルになりやすい。事前相談を |
| 行政手続き(改葬許可申請) | 無料〜数百円/通 | 自治体により手数料が異なる |
| 新しい納骨先の費用 | 供養方法により大きく異なる | 一般墓・納骨堂・永代供養・樹木葬で幅 |
※金額はあくまで目安です。墓地の面積・立地・石材店・寺院・地域によって大きく変動します。断定的な相場をうのみにせず、必ず複数の業者から書面で見積りを取り、内訳を確認することをおすすめします。
閉眼供養(魂抜き)と開眼供養(魂入れ)とは
改葬・墓じまいでは、遺骨を取り出す前と、新しく納骨するときに、それぞれ法要を営むのが一般的です。
- 閉眼供養(魂抜き・お性根抜き)……墓石を撤去する前に僧侶に読経していただき、お墓に宿るとされる魂・お性根をお還しする法要です。
- 開眼供養(魂入れ・お性根入れ)……新しいお墓・納骨堂へ納める際に、あらためて魂をお迎えする法要です。
お布施の目安はそれぞれ1万〜3万円程度ですが、地域や寺院との関係によって異なります。菩提寺がある場合は、まずご住職に相談しましょう。魂抜きの意味や作法については「魂抜きをしないとどうなる」もご参考ください。
浄土真宗の改葬
浄土真宗では、亡くなった方は阿弥陀如来の救いによってただちに浄土に生まれ、仏となると受けとめます。そのため「墓石や位牌に魂が宿る」「魂を抜く・入れる」という考え方をとりません。改葬・墓じまいの手続き自体(改葬許可の取得など)は他の宗派とまったく同じですが、法要の呼び名と受けとめ方が異なります。
閉眼供養・開眼供養にあたるお勤めは、浄土真宗では遷仏法要(せんぶつほうよう)・遷座法要、新しくお墓を建てる際は建碑法要(けんぴほうよう)として営みます。故人の霊を移すのではなく、阿弥陀如来のはたらきに感謝する仏縁の場として受けとめるのが特徴です。また、お仏壇には位牌ではなく法名軸や過去帳をご安置する家も多くあります(宗派・ご家庭によって異なるため一概には言えません)。くわしくは「浄土真宗の位牌(法名軸・過去帳)」をご覧ください。
改葬・墓じまいをしても、位牌はどうする?
ここが、多くの改葬・墓じまいの解説で抜け落ちている大切なポイントです。結論から言えば、改葬・墓じまいをしても、位牌はこれまで通り自宅の仏壇でお祀りし続けるのが基本で、処分する必要はありません。
改葬・墓じまいは「お墓(遺骨)」をどうするかという話であり、位牌は、お墓とは別のものです。遺骨の行き先を新しいお墓・納骨堂・永代供養・手元供養のいずれに決めても、位牌は自宅に残して、これまで通り手を合わせ続けることができます。「お墓を整理したから位牌も急いで処分しなければ」という決まりはありません。位牌そのものについては「本位牌とは」もあわせてご覧ください。
仏壇じまいを併せて行う場合の位牌
位牌の扱いを検討するのは、遺骨だけでなく仏壇そのものも手放す(仏壇じまいをする)場合です。この場合に限り、次のような整理を検討します。
- 位牌の閉眼供養・お焚き上げ……仏壇の閉眼供養とあわせて、古い位牌を僧侶に供養してもらい、お焚き上げでお見送りする方法です。作法や費用は「位牌の処分・お焚き上げ」でまとめています。
- 「先祖代々之霊位」へまとめる……古い個別の位牌を、繰り出し位牌や「先祖代々之霊位」の位牌に一つにまとめてお祀りを続ける方法です。「位牌を一つにまとめる」「先祖代々之霊位のお位牌」もご参考ください。
なお、お墓・墓石・仏壇本体・骨壷などは、お位牌Makerでは扱っておりません。仏壇じまい・改葬そのものは、石材店・墓地管理者・お寺・仏壇店にご相談ください(三重県内の方は、当サイト運営元の麗光堂で仏壇の修理・お洗濯のご相談を承っています)。
自宅で供養を続けるという選択(手元供養)
「お墓は遠くて通えないが、故人を身近で供養したい」という方には、自宅で供養を続けるという選択肢もあります。位牌と小さなお仏壇(またはお祀りの場)を整えて手を合わせる形は、その代表的な方法のひとつです。手元供養の考え方は「手元供養とは」でくわしく解説しています。
手元供養には、遺骨の一部を納めるミニ骨壷・分骨容器・遺骨ペンダントなどを用いる方法もありますが、これら遺骨を納める品は、お位牌Makerでは扱っておりません。当店がお手伝いできるのは、位牌(本位牌・ミニ位牌など)と文字入れのみです。それ以外の供養用品については、物販へ誘導することなく、あくまで中立的な情報提供にとどめています。ご自身とご家族のお気持ちに合う形を、落ち着いてお選びください。
離檀料などのトラブルを避けるには
寺院墓地の改葬・墓じまいでは、離檀料(お寺との付き合いを終える際に、これまでの管理・供養への感謝としてお包みするお布施)をめぐるトラブルが起こることがあります。離檀料は法律上の義務ではありませんが、長年お世話になった感謝を表す慣習として一般に行われています。
トラブルを避けるコツは、「墓じまいを決めました」と一方的に通告するのではなく、事情を丁寧にお伝えして事前に相談することです。高額を提示されて困った場合も、感情的にならず、まずは誠実に話し合うことが解決の近道になります。また、改葬は親族の心情にも関わることなので、ご家族・親族の合意を早めに得ておくことも大切です。
お墓の形が変わっても、ご先祖や故人を思い、手を合わせる心が続いていくことに変わりはありません。手続きや費用に気を取られすぎず、ご自身とご家族が納得できる供養の形を、あわてず選んでいただければと思います。改葬・墓じまいと前後して行う法要については「法事・法要とは」もご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 改葬許可証はなぜ必要なのですか?
墓地埋葬法により、遺骨を別の場所へ移す改葬には市町村長の許可(改葬許可証)を受けることが義務づけられているためです。許可なく遺骨を移動すると法律違反となり、二万円以下の罰金または拘留・科料の対象になります。改葬許可証は遺骨1体につき1通必要で、申請先は移転先ではなく「現在のお墓がある市区町村」です。
Q. 改葬許可証は交付までどのくらいかかりますか?
自治体により異なりますが、書類が揃っていれば即日〜1週間程度が目安です(郵送申請の場合はさらに日数がかかります)。改葬許可申請には移転先の受入証明書と、現在のお墓の管理者による埋葬(埋蔵)証明が必要なので、この2つを先に揃えておくと手続きがスムーズです。
Q. 改葬許可証に有効期限はありますか?
法律上、改葬許可証そのものに有効期限は定められていません。ただし移転先(納骨先)が定める受け入れ期限や規則に従う必要があるため、交付を受けたら早めに納骨するのが安心です。取り扱いの詳細は移転先の管理者にご確認ください。
Q. 土葬されていた遺骨も改葬できますか?
できます。ただし土葬の遺骨を改葬する場合、移転先の墓地・納骨堂によっては火葬を求められることがあり、その際は別途、火葬の手続きが必要になることがあります。手順は地域や自治体で異なるため、現在のお墓の管理者と市区町村役場の両方に事前に確認しましょう。
Q. 遺骨を自宅で供養(手元供養)する場合も改葬許可は必要ですか?
移す先が墓地・納骨堂でない自宅安置の場合、改葬に当たるかどうかの取り扱いは自治体によって分かれます。ただし、お墓から遺骨を取り出す際には管理者が書類を求めることが多いため、まず現在のお墓の管理者と市区町村役場にご確認ください。なお、遺骨を納める骨壷・ミニ骨壷・遺骨ペンダント等はお位牌Makerでは扱っておらず、位牌でのお祀りをご案内しています。
Q. 改葬・墓じまいをしたら、位牌も処分しないといけませんか?
いいえ、その必要はありません。位牌はお墓(遺骨)とは別のもので、改葬・墓じまいをしても、これまで通り自宅の仏壇でお祀りし続けるのが基本です。位牌の扱いを検討するのは、仏壇そのものも手放す(仏壇じまいをする)場合などに限られます。急いで処分する決まりはないので、落ち着いてご家族で考えて構いません。
