
魂入れはあまり知られていないことが多い儀式です。
身内が亡くなり、初めて位牌への魂入れを聞いたとき、「本当に必要なのだろうか?」と疑問に思う方もいるでしょう。
この記事では、位牌への魂入れがなぜ必要なのか、その理由や適切なタイミング、依頼方法などを分かりやすく解説します。
また、魂入れを行わなかった場合の影響や注意点についても説明しているので、ぜひ参考にしてください。
位牌への魂入れとは
位牌への魂入れとはどのようなものなのか、どのように始まったのか、魂入れについて分かりやすく解説します。
魂入れとは
魂入れとは、故人の魂を物体に宿らせるための仏教の儀式です。
位牌や仏壇、お墓などに対して執り行われます。
魂入れがされていない位牌は、単なる木の板に過ぎません。
魂入れによって初めて、故人の魂を祀るものとしての意味を持つのです。
魂入れ以外の名称
この儀式は「魂入れ」のほか、「開眼供養」とも呼ばれます。
「開眼供養」とは、仏像に最後に目を入れて魂を宿らせるという意味で、仏像制作の工程が由来です。
また、「お性根入れ」や「御霊入れ」といった呼び方もあり、いずれも「故人の魂を宿らせる」という意味を持ちます。
魂入れの歴史
日本で魂入れが始まったのは奈良時代とされ、東大寺の大仏に対する開眼供養がその代表例です。
彫刻物であった大仏に最後に目を入れることで、魂が宿った仏像となったと伝えられています。
位牌分けをするときの魂入れ

位牌を複数の場所に祀る必要がある場合、「位牌分け」を行います。
位牌分けとは、故人一人の位牌を複数制作し、別々の場所に祀ることをいいます。
例えば、親の位牌を兄弟姉妹で分け、それぞれが自宅で供養できることが位牌分けのメリットです。
「次男だけど自宅で供養したい」「嫁ぎ先で祀りたい」といった希望も「位牌分け」で実現されています。
ここでは、位牌分けをするときの魂入れについて見ていきましょう。
位牌分けで魂入れは必要ない?
親族で分けるだけなので、魂入れは必要ないと思われるかもしれませんが、位牌分けでも魂入れが必要です。
魂入れがされていない位牌は、仏教的にはただの木の板であり、供養の対象にはなりません。
しかし、魂入れを行っても、位牌に何か変化が起こるわけではなく、それまでと同じ状態です。
魂入れをしていないからといって、何か問題が起こるわけではありません。
事情があって魂入れが難しい場合は、無理に行わなくてもかまいません。
ただし、仏教の考えでは「魂入れされた位牌」が故人の魂を宿し、祈りの対象となるとされています。
そのため、正式に供養したい場合には、位牌分けをした際も魂入れをしておくのが望ましいです。
嫁ぎ先での位牌分け
かつては、嫁ぎ先で位牌を祀ることは一般的ではありませんでした。
これは、嫁ぎ先の宗教や宗派が実家と異なる場合に、信仰上のトラブルを避けるためでもあります。
しかし、近年は核家族化が進み、嫁ぎ先に位牌を置くことも珍しくなくなってきました。
宗教や宗派が異なる場合には、祀り方やしきたりについて、事前に両家でしっかりと話し合い、理解を得た上で位牌分けを行うことが大切です。
位牌の魂入れは必要?
そもそも、位牌の魂入れは必要なのでしょうか。
魂入れをしないとどうなるのか、無宗教の場合はどうすればいいのかを解説します。
魂入れをしないと供養できない?
位牌は、魂入れをしないと供養できません。
これは、魂入れを行うことで故人の魂が位牌に宿ると考えられていることから、魂入れをしない位牌は供養の対象にならないためです。
しかし、故人を供養するときに、必ずしも位牌が必要とは限りません。
仏教以外の宗教(例えばキリスト教など)では、位牌を祀ること自体を行わないため、供養そのものに魂入れが必須とはいえないでしょう。
ただし、仏教の考え方では、魂入れをしていない位牌には魂が宿らないので、「位牌」としての役割を持たないと考えられています。
魂入れをしないと供養できないわけではないですが、位牌を祀るなら魂入れをして、故人の魂を宿して供養しましょう。
魂入れをしない場合の影響
魂入れをしないことによる影響は、故人を大切にしていないと思われ、親族から非難を受ける可能性があることです。
魂入れをしていない位牌は、魂が宿っていないため位牌としての役割がなく、単なる木の板と考えられています。
そのため、親族から「正しく供養ができていない」と言われ、トラブルに発展するケースも見られるのです。
一方で、位牌を分けた人(例えば次男や嫁ぎ先など)には、必ずしも魂入れが求められるわけではないため、トラブルになりにくいといえるでしょう。
しかし、長男や実家など供養するべき場所の位牌が魂入れをしていないと、トラブルが起こりやすいので、魂入れをすることがおすすめです。
無宗教の場合
無宗教の場合、仏壇や位牌を祀らないことが多く、祀る場合であっても「魂入れ」の儀式は行わないのが一般的です。
魂入れをしないと供養にならない、というのは仏教の考え方なので、無宗教の場合は魂入れよりも「供養したい」という「故人を思う気持ち」が何よりも大切だといえるでしょう。
浄土真宗の魂入れ
仏教でも宗派により考え方が異なり、供養の方法にも違いが見られます。
浄土真宗では位牌を祀らないため、魂入れも必要ありません。
位牌を供養する目的は、故人が成仏するためですが、浄土真宗は「人は亡くなるとすぐに仏となり成仏する」と考えられています。
供養しなくても成仏できるので、位牌は必要ないのです。
位牌が必要ないとされる浄土真宗では、位牌を祀らない代わりに、ご先祖様について記された「過去帳」や、浄土真宗の戒名である法名が記された「法名軸」を置きます。
浄土真宗では、位牌は本来必要とされていませんが、祀ること自体が禁じられているわけではありません。
そのため、故人をしのぶために位牌を置きたい場合は置いても問題ありません。
位牌に魂入れをするタイミング

位牌の魂入れは、購入と同時にできるものではなく、購入してから行います。
また、位牌の設置場所を移動したり、新しく買い替えたりした場合にも、「魂入れ」が必要になります。
ここでは、魂入れを行うべきタイミングについて詳しく解説していきましょう。
四十九日
亡くなった故人の位牌を新しく購入したときは、亡くなって49日目に行う「四十九日法要」で魂入れをするのが一般的です。
四十九日法要を境に、故人の魂が浄土へと向かうため、魂入れをするのによいタイミングとされています。
初盆・一周忌法要
四十九日法要のときに魂入れができなかった場合は、初盆や一周忌法要の際に行います。
供養を始めるタイミングは、できるだけ早い時期が望ましいとされていますが、初盆や一周忌でも難しい場合は、三回忌法要に合わせて行っても差し支えありません。
いつまでに魂入れをしなければならない、という明確な期限はありません。
できるだけ早く、都合のよいタイミングで魂入れができれば、スムーズに供養を始められます。
大切な家族を亡くした遺族の心を落ち着けるためにも、早く供養ができるとよいでしょう。
仏壇の引っ越し
仏壇を別の場所に引っ越したときにも、魂入れが必要です。
ただし、家の中で別の部屋に移動した場合は、魂入れは必要ありません。
別の建物へ移動した場合には、母屋から近い場所であっても、新しい場所に設置した後で魂入れを行いましょう。
宗派によっては、仏壇を元の場所から移動させる前に「魂抜き」の儀式が必要とされる場合があります。
仏壇の引っ越しが決まったら、事前にお寺に確認しておくと安心です。
位牌や仏壇を買い替えたとき
位牌や仏壇を新しく買い替えた際には、「魂抜き」と「魂入れ」の両方の儀式が必要になります。
位牌や仏壇に故人の魂が宿っているとされるため、今まで祀っていた位牌や仏壇を処分する前に、魂を抜き出さなければなりません。
そのために必要なのが魂抜きの儀式です。
そして、新しく買った位牌や仏壇は、そのままでは単なる「木の板」や「木の箱」に過ぎず、まだ供養の対象とはなりません。
したがって、魂入れを行い、故人の魂を位牌や仏壇に宿します。
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故人様を祀る大切なお位牌を、お位牌Makerにご依頼してみてはいかがでしょうか。
位牌への魂入れ依頼

魂入れをしようと思っても、どこに依頼すればいいのか分からない人も多いでしょう。
ここでは、魂入れを依頼する先をどのように選べばいいのか、依頼しても受けてもらえず断られた場合の対処法について解説します。
魂入れの依頼先
魂入れは、お寺へ依頼します。
魂入れの儀式では、僧侶に読経してもらうため、菩提寺への依頼が一般的です。
遠方に住んでいて菩提寺への依頼が難しい場合は、その菩提寺へ相談してみてください。
状況に応じて、近隣のお寺を紹介してもらえるなど、柔軟に対応してもらえることがあります。
菩提寺がない場合や、菩提寺との付き合いが浅くて依頼しにくい場合には、葬儀を依頼した業者や、位牌や仏壇を購入した仏具店に相談してみましょう。
依頼先の選び方
依頼先としてまず挙げられるのが、先祖のお墓がある菩提寺です。故人にゆかりのある菩提寺へ依頼するのがもっとも安心できる方法となります。
依頼する方法は、電話で菩提寺へ直接連絡をするのが一般的です。
四十九日法要や一周忌法要の際に魂入れをする場合は、日程を合わせなければなりません。
魂入れの依頼は、できるだけ早めにするのがよいです。
依頼して断られた場合
菩提寺に依頼しても、必ず引き受けてもらえるわけではなく、日程が合わないなどの理由で断られることがあります。
断られた場合にどうすればいいのか、菩提寺以外の依頼先について見ていきましょう。
同じ宗派のお寺
日程が合わなくて菩提寺に依頼できなかった場合は、同じ宗派のお寺を紹介してもらえることが多いです。
紹介してもらえない場合は自分で探し、事情を話して相談してみましょう。
葬儀社に相談
葬儀社は、魂入れなどの知識が豊富なので、困ったときには相談してみてください。
相談する葬儀社は、故人の葬儀でお世話になった葬儀社がおすすめです。
寺院と提携を結んでいる葬儀社もあり、葬儀社から紹介してもらえることもあります。
石材店や仏壇店に相談
お墓の墓石を購入した石材店や、仏壇を購入した仏壇店に相談するのも一つの方法です。
提携している寺院があれば、紹介してもらえるでしょう。
僧侶派遣サービス
僧侶を派遣するサービスがあり、魂入れも依頼できます。
お住まいの地域に僧侶派遣サービスがあれば依頼できるので、インターネットで検索してみてください。
対応可能なエリアや宗派、料金なども調べられるので、複数の業者がある場合には比較して検討するとよいでしょう。
位牌への魂入れの事前準備

位牌に魂入れをする場合、事前にさまざまな準備をする必要があります。
どのような準備が必要なのか、順番に見ていきましょう。
日時の決定
初めに日時を決めなければなりません。
いくつか候補日を用意した上で菩提寺に連絡し、僧侶と相談しながら決めるとスムーズです。
四十九日や一周忌の法要と同時に行う場合、親族の都合も合わせる必要があるため、早めに決めるのがおすすめです。
参列者への連絡
買い替えや引っ越しのときの魂入れは家族だけで行うため、親族への連絡は不要ですが、四十九日法要で行う場合は参列者へ連絡をします。
連絡の際は、魂入れについて伝える必要はなく、一般的な四十九日法要についての案内で問題ありません。
お供え物を準備
魂入れをする際には、仏壇へのお供え物を準備します。
お供え物は宗派や地域によって違いがあるため、分からない場合は菩提寺に相談してみましょう。
一般的なお供え物としては、お花やお膳、果物、お餅などがよく用いられます。
お布施を準備
魂入れでは、僧侶に自宅まで来てもらい、読経してもらうため、お布施が必要です。
一般的なお布施の金額は、5万円から10万円程度ですが、菩提寺に確認してみてください。
僧侶派遣サービスを利用する場合の料金相場は、一般的なお布施の金額よりも低めに設定されていることが多いです。
会食の手配
魂入れだけを行う場合は不要ですが、四十九日の法要と同時に行う場合、法要の後に会食をするケースが多く、事前の手配が必要です。
人数が分かった段階で予約を入れます。個室があるお店を選ぶのがよいでしょう。
会食には僧侶も参加しますが、多忙で参加できない場合もあり、不参加の場合は5千円から1万円程度の御膳料が、お布施とは別に必要です。
位牌への魂入れに関する注意点

魂入れでは、気を付けなければならないことがあります。
知らずに魂入れを行うと、恥ずかしい思いをするかもしれないので、事前の確認が大切です。
依頼するときのマナー
依頼の際は電話で連絡するのが一般的です。
感謝の気持ちを大切にし、丁寧な対応を心がけましょう。
また、僧侶が多忙で日程調整が難しい場合もありますが、その際は謙虚な姿勢で対応することが重要です。
依頼の際には、まず僧侶の都合を聞き、日程を調整していきます。
希望する日時や場所、参列者の人数を伝え、お布施の金額も確認しておきましょう。
魂入れのお布施
お布施は、魂入れのみを依頼する場合と、四十九日法要と同時に行う場合では、金額が異なります。
また、お布施の包み方や渡し方も、事前に確認しておくと安心です。
法要と同時に魂入れをする場合のお布施
魂入れのお布施は3万円程度ですが、法要と同時に魂入れをする場合には、5万円から10万円程度が相場です。
宗派や地域、寺院による違いがあるため、魂入れを依頼する菩提寺に確認しましょう。
お布施の包み方
お布施の包み方も、魂入れのみと、四十九日法要と同時に行う場合で違いがあります。
- 魂入れのみを行う場合:紅白の水引が書かれた祝儀袋に入れる
- 四十九日法要と同時に行う場合:不祝儀袋に入れる
僧侶へのお布施は、魂入れと法要いずれの場合も儀式の最後に渡すのが一般的です。
両手で丁寧に渡し、頭を下げて感謝を伝えましょう。
まとめ
位牌の魂入れは、故人の魂を位牌に宿す大切な儀式です。
新しく位牌を作った際はもちろん、位牌の買い替えや引っ越しを行った場合にも、必ず魂入れをして正しく供養を行いましょう。
魂入れの形式やマナーについては、難しく考える必要はありません。
もっとも大切なのは、故人を心から供養したいという気持ちです。
もし不安や疑問があれば、必ず菩提寺や信頼できるお寺に相談して確認しましょう。
適切なタイミングで魂入れを行うことで、故人の魂をしっかりと位牌に迎え入れ、心穏やかに供養を続けることができます。
これにより、家族や親族も安心して故人をしのぶことができるでしょう。
