位牌に書かれる文字には、宗派ごとに細かい決まりごとがあります。表面の冒頭に入る「梵字(種子字)」、戒名の表記、末尾の「位」の有無──これらは宗派によって異なり、間違えるとご住職や菩提寺に指摘される場合もあります。
本記事では、仏壇修復「麗光堂」と本位牌通販「お位牌Maker®」を運営するRKDコーポレーションが、年間数千基のお位牌制作で蓄積してきた知見をもとに、主要6宗派の梵字・戒名書式の違いを一覧表で整理し、宗派ごとの表書きの実例とあわせて解説します。
- 梵字(種子字)とは何か、なぜ位牌に入れるのか
- 真言宗/天台宗/浄土宗/浄土真宗/曹洞宗・臨済宗/日蓮宗の表書きの違い
- 戒名・法名・法号の使い分け
- 「位」と「霊位」の違い、宗派による末尾の慣習
- 位牌を注文する前に菩提寺へ確認すべきポイント
梵字(種子字)とは何か
位牌の表面、戒名の上部に小さく書かれる文字を「梵字(ぼんじ)」、または「種子字(しゅじじ)」と呼びます。古代インドのサンスクリット語を起源とする文字で、仏や菩薩を一文字で象徴します。
梵字を位牌に入れる意味
梵字は単なる装飾ではなく、その宗派の本尊やご縁のある仏様を一字で表す象徴です。位牌に梵字を冠することで、故人がその仏様のご加護のもとで安らかに過ごせるよう祈る意味があります。
梵字を入れる宗派・入れない宗派
梵字を入れるかどうかは宗派により異なります。真言宗・天台宗・浄土宗・日蓮宗では入れるのが一般的で、浄土真宗・曹洞宗・臨済宗では入れないのが一般的です。
主要6宗派の梵字・戒名書式 一覧表
| 宗派 | 梵字 | 表す仏様 | 戒名の呼び方 | 末尾の慣習 |
|---|---|---|---|---|
| 真言宗・天台宗 | ![]() ア |
大日如来(胎蔵界) | 戒名 | 位 / 霊位 |
| 浄土宗 | ![]() キリーク |
阿弥陀如来 | 戒名(誉号を含む) | 位 / 霊位 |
| 浄土真宗 | 入れない | (阿弥陀如来) | 法名(釋◯◯) | 位牌そのものを用いないのが原則 |
| 曹洞宗・臨済宗(禅宗) | ![]() 空(または無し) |
釈迦如来 | 戒名 | 位 / 霊位 |
| 日蓮宗 | ![]() 妙法 |
久遠実成本師釈迦牟尼仏 | 法号(日号を含む) | 位 / 霊位 |
その他の梵字
真言宗で金剛界大日如来をご本尊とする場合は「バン(
)」、釈迦如来をご本尊とする場合は「バク(
)」を用いることもあります。お子様用には地蔵菩薩を表す「カ」を入れる場合もあります。本尊の指定がある場合は菩提寺にご確認ください。
※細かな書式・地域や寺院の慣習で異なる場合があります。必ず菩提寺・ご住職に確認のうえ作成してください。
宗派別・表書きの実例
真言宗・天台宗

梵字「ア」(胎蔵界大日如来)
表面の冒頭に梵字「ア」(胎蔵界大日如来を表す種子字)を入れ、その下に院号・道号・戒名・位号を縦書きで配置します。
例:ア 〇〇院△△□□居士
真言宗智山派・豊山派・高野山真言宗などの分派でも、梵字「ア」を入れる慣習は共通しています。金剛界大日如来をご本尊とする場合は「バン(
)」を用いることもあります。
浄土宗

梵字「キリーク」(阿弥陀如来)
表面の冒頭に梵字「キリーク」(阿弥陀如来を表す種子字)を入れ、その下に院号・誉号・戒名・位号を配置します。「誉号」は浄土宗特有で、「○誉」のように、戒名の前に挿入されることが多くあります。
例:キリーク 〇〇院△誉□□居士
浄土真宗(本願寺派・大谷派ほか)
浄土真宗では、位牌を作らないのが原則です。代わりに「法名軸(ほうみょうじく)」や「過去帳」を仏壇に安置します。
法名は「釋(しゃく)」または「釋尼(しゃくに)」を冠した2字の法名(例:釋〇〇)が一般的です。
※ご家庭の事情により「先祖代々之位牌」「俗名位牌」などを作る場合は、菩提寺にご相談ください。
曹洞宗・臨済宗(禅宗)

禅宗で用いる「空(くう)」の字
曹洞宗・臨済宗では梵字を入れないのが一般的です。表面の冒頭に何も入れないか、ご住職の指示で「空(くう)」や「○」など簡素な印を入れる場合があります。釈迦如来をご本尊とする場合は「バク(
)」の梵字を入れることもあります。
例:〇〇院△△□□居士(梵字なし、戒名のみ)
日蓮宗

日蓮宗で用いる「妙法」(南無妙法蓮華経)
日蓮宗では、表面の冒頭に「妙法(みょうほう)」の二文字を入れます。これは「南無妙法蓮華経」のお題目を象徴するものです。戒名は「日号」を含んだ「○○日△」の形が特徴的です。
例:妙法 〇〇院△□日男居士
戒名・法名・法号の使い分け
同じ「故人の宗教的な名前」でも、宗派によって呼び方が変わります。
| 呼称 | 使う宗派 | 意味 |
|---|---|---|
| 戒名 | 真言宗・天台宗・浄土宗・曹洞宗・臨済宗 など | 仏弟子となった証。戒律を守る誓いの名前 |
| 法名 | 浄土真宗 | 阿弥陀如来の本願によって浄土に往生した名前 |
| 法号 | 日蓮宗 | 日蓮宗の教えに帰依した証の名前 |
「位」と「霊位」の違い・末尾の慣習
位牌の末尾に書かれる「位」「霊位」には、それぞれ意味と使い分けがあります。
「霊位」と書くケース
白木位牌(仮位牌)の末尾には「霊位」と書くのが伝統的です。「故人の霊が宿る位」という意味で、四十九日までの仮の状態を表します。
「位」と書くケース
四十九日法要を経て本位牌に切り替える際は、末尾を「霊位」から「位」のみに変えるのが一般的とされています。「霊」を外すことで、故人が成仏し位号として定まった状態を示します。
地域・宗派による違い
ただし、地域や寺院の慣習によっては本位牌でも「霊位」と書く場合もあります。お位牌Maker®では、ご住職の指示に従って末尾の指定が可能です。詳しくは先祖供養とは?「先祖代々之霊位」のお位牌もご参照ください。
位号(位の階級)について
戒名の末尾には「位号(いごう)」と呼ばれる、生前の徳行・社会的地位・年齢などを反映した称号が付きます。位号は宗派と性別で異なります。
| 位号 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| 大居士・清大姉 | 男性/女性(最高位) | 著名な信徒・社会的功績の大きい方 |
| 居士・大姉 | 男性/女性(高位) | 信仰心が篤く徳行ある方 |
| 信士・信女 | 男性/女性(一般) | もっとも一般的な位号 |
| 童子・童女 | 男児/女児 | 15歳未満の子ども |
| 嬰子・嬰女 | 男児/女児 | 1歳未満の乳幼児 |
院号・道号について
院号(いんごう)
戒名の冒頭にある「〇〇院」の称号を院号と言います。生前に寺院への貢献や社会的功績が顕著だった方に授けられる最上位の称号で、戒名料が大きく変わる要素でもあります。「院号」を望まない場合は付けない選択もあります。
道号(どうごう)
院号の下に置かれる「△△」の二文字を道号と言います。故人の人柄や趣味・生き様を反映して僧侶が選びます。浄土真宗では道号は付けず、「釋〇〇」の形になります。
戒名の構造を理解する
院号付きの戒名は、おおよそ次の4つの要素で構成されています。
〇〇院 △△ □□ ◇◇
(院号)(道号)(戒名)(位号)
- 院号:〇〇院(または〇〇院殿)── 最高位の称号
- 道号:△△ ── 人柄を表す二文字(浄土真宗ではなし)
- 戒名(狭義):□□ ── 仏門に入った証の二文字
- 位号:◇◇(居士/大姉/信士/信女など)
位号の後ろに、宗派・状態に応じて「位」または「霊位」を入れます。
位牌を注文する前に菩提寺に確認すべき5項目
表書きを正確に作るために、菩提寺・ご住職に以下を確認しておくと安心です。
- 梵字の有無と種類(ア/キリーク/妙法/なし)
- 戒名の正式な表記(旧字・異体字の指定があれば原文書類を入手)
- 末尾の「位」か「霊位」か
- 院号・道号の表記(漢字に揺れがあるとき)
- 裏面に書く事項(俗名・没年月日・享年など、和暦か西暦か)
これらを白木位牌や戒名証から書き写し、写真や紙にまとめてお位牌Maker®のご注文時にお伝えいただければ、確実に再現できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 梵字を入れずに位牌を作ることはできますか?
はい、可能です。曹洞宗・臨済宗・浄土真宗(位牌を作る場合)では梵字を入れないのが一般的です。他宗派でも、ご家族・菩提寺の方針で省略するケースがあります。
Q2. 真言宗の「ア」の梵字は、どんな書体になりますか?
悉曇文字(しったんもじ)と呼ばれる古代インド系の文字で、形状は寺院や流派により多少の違いがあります。お位牌Maker®では仏教書道の専門書体で正確に再現しています。
Q3. 院号がない戒名でも位牌は作れますか?
もちろん作れます。院号は必須ではなく、信士・信女など標準的な位号のみの戒名でも問題ありません。ご住職にいただいた戒名そのままを忠実に再現します。
Q4. 戒名がない場合、俗名だけで位牌を作れますか?
作れます。「俗名位牌」と呼ばれ、戒名なしで生前のお名前のみを記す形式です。無宗教の方や、戒名を授からない選択をされたご家庭で多く作られています。
Q5. 浄土真宗ですが、位牌を作りたい場合はどうすればよいですか?
浄土真宗では原則として位牌を作りませんが、「先祖代々之位牌」など簡素な位牌を作るご家庭もあります。菩提寺やご住職に相談のうえ、法名軸・過去帳と併せてご判断ください。詳しくは先祖供養と「先祖代々之霊位」の位牌をご参照ください。
Q6. 宗派が分からない場合はどうすればよいですか?
菩提寺やご親族にお尋ねいただくのが最も確実です。お墓の石碑、お仏壇のご本尊の様式、過去の法要を執り行ったお寺の宗派などから判別できる場合もあります。お位牌Maker®でも、表書きの参考画像があれば書式の確認をお手伝いできます。
Q7. 表書きを間違えてしまった位牌はどうすればよいですか?
修正可能な場合は文字の差し替え・再彫刻で対応します。難しい場合は、新しい位牌を作り直し、誤りのある古い位牌は魂抜き(閉眼供養)の上でお焚き上げするのが一般的です。お位牌Maker®では再注文の際もお気軽にご相談ください。
まとめ──宗派に合った正しい表書きを
位牌の表書きは、故人と仏様をつなぐ大切な印です。宗派ごとの梵字・戒名・位号の決まりを理解し、菩提寺の指示を仰いで作成するのが基本です。
- 真言宗・天台宗:梵字「ア」
- 浄土宗:梵字「キリーク」
- 浄土真宗:原則として位牌を作らず、法名軸・過去帳
- 曹洞宗・臨済宗:梵字なし
- 日蓮宗:「妙法」を冠する
お位牌Maker®では、すべての宗派・梵字・書式に対応しています。白木位牌や戒名証の写真を添付いただければ、その通りに正確に再現します。表書きでお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。
仏壇修復「麗光堂」/本位牌通販「お位牌Maker®」/全国坐禅会マップ「坐禅会マップ」を運営。創業から仏事一筋に携わり、年間数千基のお位牌制作と仏壇修復を行っています。
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参考資料
- 『戒名のはなし』藤井正雄(吉川弘文館)
- 『梵字入門』徳山暉純(青山書院)
- 各宗派公式サイト(真言宗智山派/天台宗/浄土宗/浄土真宗本願寺派/曹洞宗/日蓮宗)
