人の戒名などが記された位牌を分ける「位牌分け」という慣習がある地域があります。
しかし、現在では地域の慣習にとらわれず、家族や親族の意向で自由に位牌を分けることが可能です。
この記事では、位牌分けの理由や方法、かかる費用について解説します。
また、注意すべきポイントも紹介していますので、位牌分けを検討されている方はぜひご確認ください。
位牌を複数に分ける「位牌分け」とは
位牌分けとは、一つの位牌を複数の人で分けて祀ることを指します。
「位牌は分けていいのか」と疑問に思われる方もいますが、位牌を分けること自体は問題ありません。
例えば、父親の位牌は通常、遺された母親が祀ることが一般的です。
しかし、離れて暮らす長男も祀りたい場合には、実家だけでなく長男の家にも位牌分けをすることで、それぞれで供養することが可能になります。
位牌を分ける理由
位牌を分ける主な理由は大きく2つあります。
一つは、古くから位牌分けの風習が根付いている地域での慣習として行われる場合、もう一つは、離れて暮らす家族それぞれが自宅で供養したいと考える場合です。
位牌を分けること自体に問題はありませんので、家族や親族で話し合って進めましょう。
もし不安な点や疑問があれば、菩提寺に相談するのもおすすめです。
位牌分けを行う地域
位牌分けは昔から一部の地域で行われていましたが、習慣となっている地域は、群馬県など北関東の一部と、長野県や山梨県、静岡県を中心とした中部地方です。
現在では核家族化が進み、地元を離れて都会に出る人も多く、古くからの習慣とは関係なく行われるようになりました。
上記に挙げた地域だけでなく、全国的に位牌分けが行われています。
現在の位牌分け
現在では、昔のような慣習にとらわれず、家族や親族の希望に合わせて比較的自由に位牌分けが可能です。
実子に限らず養子であっても、性別に関係なく位牌を分けることができます。
以前は子ども全員に位牌を分けることが一般的でしたが、現在は希望する人だけに位牌分けをするケースが増えています。
また現代の住宅事情に合わせて、コンパクトでおしゃれな位牌や仏壇も多く登場しており、気軽に位牌を置けることで、供養したい気持ちを叶えやすくなっています。
位牌分けを行うタイミング
位牌分けを行うタイミングとしては、本位牌を新たに作るときが適しています。
特に決まった時期はありませんので、いつでも位牌分けは可能です。
ただし、位牌を作るだけで位牌分けが完了するわけではありません。
位牌に故人の魂を入れる「魂入れ」の儀式を行う必要があり、この魂入れを行う本位牌を作る際に、位牌分けをするのが最適なタイミングです。
位牌を分ける方法
位牌分けとはどのように行うのか、手順について解説します。
核家族化によって、長男が実家に住むとは限らなくなっています。そのため、位牌分けをする家族が増え、位牌分けが身近な存在となりました。
「実家に住んでいないけれど両親の供養をしたい」と考える方は、位牌分けの方法を確認しておきましょう。
位牌を用意する
まず、位牌分けをする人数分の位牌が必要です。
位牌を分けるからといって、同じデザインにする必要はありません。
それぞれの住居のデザインや、設置する仏壇のサイズに合わせて、一人ひとりが好きな位牌にできます。
いつまでに準備するのか、個別に準備するのか、皆で同じお店で購入するのか、話し合っておくとスムーズです。
また、位牌には文字入れが必要なため、納品までにかかる日数も考慮しておかなければなりません。
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魂入れを行う
位牌は魂入れによって故人の魂が宿り、供養の対象となります。
僧侶の読経で魂入れを行うため、寺院に依頼してスケジュールの調整が必要です。
一般的に四十九日の法要では、仮位牌から本位牌に替えるために本位牌への魂入れを行うので、このときに位牌分けをするとよいでしょう。
四十九日法要のタイミングでの位牌分けだと、本位牌と位牌分けの両方の魂入れを一度に行えます。
位牌を祀る
魂入れの儀式が終わると、それぞれ位牌を自宅に持ち帰り、仏壇に設置して供養が可能となります。
祀り方には決まりがなく、家の中のどこに置いても問題ないので、供養しやすい場所に置きましょう。
仏壇に置くことが一般的ですが、必ずしも仏壇が必要というわけではありません。
しかし、近年では現代の住宅事情に合わせたコンパクトなものや、洋風建築のインテリアに合うおしゃれなデザインの仏壇も多く、選びやすいです。
位牌分けができないケース
昔と比べて、現在は地域や習慣にとらわれず自由な対応が増えていますが、それでも位牌分けができないケースがあるため、ここでご紹介します。
嫁いでいる
ほかの家に嫁いだ女性については、位牌分けを行わないことが一般的です。
これは、嫁ぎ先の菩提寺や宗派が異なることによるトラブルを避けるためです。
ただし、宗派が同じで位牌分けを希望する場合は、しきたりの違いなども踏まえて菩提寺に相談し、納得のいく形で進めるようにしましょう。
未婚
位牌を引き継げるのは、既婚者に限られています。
お墓や位牌の継承を考えた上での慣習によって、未婚の方に位牌分けを行うのは難しいとされているのです。
しかし、未婚率の増加によって、未婚であっても位牌分けが行われるケースも見られるようになりました。
位牌を分けるときの費用
位牌分けには、位牌の購入費用や魂入れの費用がかかります。
それ以外にかかる可能性のある費用についても、以下の表にまとめました。
| 項目 | 金額 |
| 位牌 | 1万～10万円程度 |
| 魂入れのお布施 | 1万～5万円程度 |
| 魂入れのお車代 | 5千円程度 |
| 仏壇 | 唐木仏壇：70万～100万円
金仏壇：80万～150万円 モダン仏壇：5万～50万円 |
必ずかかる費用は、位牌と魂入れのお布施です。
位牌は選ぶ位牌の素材や文字入れによって金額が異なり、お布施は寺院によって異なります。
魂入れで僧侶に自宅へ来てもらう場合には、お車代が必要です。
また位牌分けをする場合、仏壇がないことが多いので、仏壇にどのようなものを選ぶかによっても、金額が大きく異なります。
位牌分けは四十九日法要など、法要と同時に行うことが多く、魂入れのお布施とは別に法要のお布施を準備します。
ここでは位牌分けにかかる費用の紹介なので、法要のお布施は表に入れていません。
位牌を分けるときの注意点
位牌分けには、気を付けなければならないことがあります。
トラブルが起きてから「そんなことは知らなかった」などということがないよう、注意点をしっかりと押さえておきましょう。
宗派によって位牌分けが不要
位牌分けは多くの宗派で共通している儀式ですが、浄土真宗は考え方が異なり、位牌そのものを使わないため、位牌分けは行われません。
故人の魂が宿った位牌を供養するのは、故人が成仏できるように祈るためです。
浄土真宗では、死亡したときにはもう成仏しているという考えのため、位牌を必要としません。
位牌を祀らない浄土真宗では、法名軸と過去帳を仏壇に置いて故人をしのびます。
浄土真宗以外で使う位牌には、戒名が記されています。一方の浄土真宗では、戒名ではなく法名で、法名軸には法名が記されているのです。
家族でしっかりと相談をする
位牌分けを行う場合は、日程や費用など、家族で事前に話し合って決めておかなければなりません。
例えば、夫の実家の位牌分けで、妻自慢のおしゃれなリビングに昔ながらの立派な位牌を祀ることになると、もめる原因になりかねません。
今はおしゃれな部屋に祀っても浮かないモダンな位牌など、さまざまなデザインのものがあります。
特に中部地方の一部や北関東の一部で、古くから位牌分けを習慣として行ってきた地域では、注意が必要です。
実家でデザインを決めてまとめて注文し、四十九日の法要で配られることが珍しくありません。
事前に話し合いや、確認をしておきましょう。
魂入れが必要
位牌を分けるときには「魂入れ」が必要です。
仏教の世界では、魂入れの儀式を行うことで、位牌に故人の魂が宿り、供養の対象となると考えられています。
戒名などの文字を入れた位牌を作っても、魂入れを行わなければ、「位牌」ではなく「木の板」に過ぎません。
位牌は、魂入れをしてから祀りましょう。
位牌を処分する場合には魂抜きが必要
将来、位牌が不要になった場合や、供養を続けることが難しくなった場合など、位牌を処分するときには魂抜きが必要です。
位牌分けをするなら、位牌には先祖の魂が宿っているため、責任を持ってきちんと供養しなければなりません。
もしもなんらかの理由で、位牌を処分しなければならなくなった場合は、魂抜きを行ってから処分しましょう。
魂抜きをすると、位牌ではなくただの木の板になるので、問題なく処分できます。
三十三回忌や五十回忌では、個別の位牌を先祖代々のものと一緒にする弔い上げを行うことが多いです。
実家で弔い上げをするときに、一緒に魂抜きをする方法もあります。
まとめ
一つの位牌を家族や親族で分ける「位牌分け」について解説しました。
位牌分けは、古くから一部の地域で習慣として行われてきましたが、現在では核家族化の進展や生活環境の変化により、全国的に行う方が増えています。
長男だからといって必ずしも実家で同居するわけではなくなっているため、離れて暮らす家族それぞれで供養できるように、位牌分けをする方が増えていると考えられます。
位牌分けを行う際には、故人の魂を位牌に宿らせる「魂入れ」の儀式が必要です。
また、不要になった位牌を処分する際には「魂抜き」を行う必要があることも、位牌分けを検討する前に知っておくと安心です。
